インドネシアの裁判制度〜その2 裁判傍聴

Selamat sore!

皆様、こんばんは。

日本は緊急事態宣言も解除されましたが、東京では感染者が微増といった形が続いていますね。やはり世間で言われているように、これからは第2波・第3波が必ず来ることを前提に行動していかなければならないのかもしれません。

 

インドネシアでも、感染のピークは過ぎたと見られているようで、制限を緩和する方向で動いているようです。しかし、そもそもレバラン休暇での帰省を防ぎ切れていない上、聞いたところによると、州境の越境違反者やマスクを着用していない者の処罰が、臀部への鞭打ち(つまり、お尻ぺん○んですね)や腕立て伏せというレベルで実施されているようですから、今後もどうなるか分からない状況ですね。

また、現地の弁護士の話では、インドネシアの労働省がコロナウイルスのコントロール状況が不明の場合、外国人労働者に新しい就労許可を発行しないという方針にしている旨の話も上がっていました。

 

長い闘いにはなりそうですが、皆さん頑張りましょう。

 

さて、今回は、まだ新型コロナがインドネシアで感染確認される前に行ってまいりました、ジャカルタ裁判傍聴の雑感をお伝えしたいと思います。

 

私が訪れたのはジャカルタの通常裁判所です。

入り口に入る前に、東京地方裁判所等と同様に荷物検査があります。

と言っても、東南アジアは大きなショッピングモールレベルでどこでもチェックしているので、この辺りは珍しくないですね。

こちらが入ってすぐのエントランス部分です。

それほど広くはありませんが、豪華な作りでした。

こちらが法廷前の廊下です。どこの国でも裁判所の廊下は重苦しい雰囲気ですね。

その日に行われる裁判は、全て電光掲示板に掲示されるため、友人の目当ての事件(大学の課題として、傍聴結果を報告しなければならなかったようです。)を探して指定の法廷に向かうのですが、全く始まる気配がありません。(係員にも確認しているので、場所を間違えたわけではありません。)

多分1時間後になったんだと思うと係員が言うので、仕方なく裁判所の受付を見学に行きました。

裁判体ごとに受付が分かれている日本の裁判所とは異なり、窓口はここ1箇所のようでした。このため、人で溢れかえっています。

待合室には、いろんな裁判手続きに関する説明書きが置いてありました。

さらに、インドネシアでは、(少なくとも制度上は)オンラインでの裁判手続も進んでおり、e-courtの窓口もありました。P Cを持っていない人用ですかね?

いまだにF A Xでのやり取りが続く日本でも早急に進めて欲しいところです。

 

1時間ほど時間を潰して元の法廷に戻りましたが、全く始まりそうにありません。

このままでは無駄足になってしまいそうなので、すでに開廷していた法廷に移動しました。

 

そこでは、法学者を呼んで賄賂罪が成立するかどうかの尋問を行っていたのですが、まず傍聴席のラフさに驚きます。日本ではカメラで法廷を撮影することはおろか、携帯電話を取り出して使用することすら禁止されているのですが、なんと、傍聴席で携帯を充電しながらゲームをしているじゃないですか!!

さらに他の大きめの法廷でも、一眼レフで写真を撮影していても裁判官は何も文句を言いません。。。これは日本の弁護士としてはカルチャーショックでした。私も撮影してみようかと思いましたが、一応は禁止事項のようでしたので控えました。

 

また、傍聴した尋問が専門家に対するものであったせいかもしれませんが、質問が全く一問一答形式になっていませんでした。弁護士がずっと話していたかと思いきや、今度は法学者が回答で延々と話し続けるといった具合です。裁判記録と言うか証言記録はどうやって残しているか不思議です。。。

 

1時間ほどかけて2つの法廷を見て回ったのち、最初に訪れた法廷を再度覗いて見ましたが、最後まで始まらないままでしたので、諦めてその場を後にしました。

 

いかがでしたが?

予想はしていたのですが、法廷の遅延はショックでした。せいぜい30分くらいの遅れならばわかるのですが、2時間以上過ぎても係員も慌てる様子はなさそうです。時間が読めないインドネシアは裁判の時間すら読めないことを痛感しました。

 

それではまた次回!

 

おまけ

訪れたジャカルタの裁判所では、エレベーターが見当たらず、皆、外の廊下と階段を使って移動していました。こちらが、その廊下から外を撮った写真です………隣家が近すぎませんか?

入り口でいくら荷物検査したところで、これなら隣家から火炎瓶等を投げ入れることは十分に可能な距離です。東南アジアのショッピングモールの荷物検査と同じで、裁判所の警備も形式的なものに過ぎないようですね。

インドネシアの裁判制度〜その1 制度概要

Selamat siang!

まだ感染拡大がインドネシアではそれほど大きな事態となってはいなかった3月某日に、友人に誘われてジャカルタの裁判を傍聴してきましたので、今回はインドネシアの裁判制度の概要をご紹介し、次回に私が傍聴したときの様子をお伝えしたいと思います。

 

インドネシアには最高裁判所とその下に設置される通常裁判所があるところは日本と同じですが、最高裁判所の管轄に、さらに宗教裁判所、軍事裁判所、行政裁判所があります。

宗教裁判所は、名前こそ「宗教」となっていますが、ここでいう宗教はイスラム教を指し、イスラム教徒の婚姻関係などを判断する機関です。イスラム教は他の宗教と違い、その戒律が実生活を法規範として拘束するレベルとなっているのでこのような事態になるのでしょうね。

 

こちらは私が所属するJ I L A(日本インドネシア法律家協会)で2017年に最高裁判所を訪問した際の写真です。

外にはジャカルタの象徴・モナスも見えます。

建物の最上階は、ドーム上になっており、最高裁判事が集まって議論ができるようになっています。しかし、写真を見ておわかりの通り、ものすごく広いのです。インドネシアには最高裁判事が約50名いらっしゃる(その時々で人数が変わります。。。)ので、これぐらいの広さにしなければならないのかも知れませんが、円形上に座席が配置されているため、端と端では互いの顔は見えなさそうですね。そもそも、この形、近くのモスクとそっくりなような。。。

さて、通常裁判所は日本と同じように、地方裁判所と高等裁判所があります。私が傍聴したのもこの通常裁判所です。また、通常裁判所には、専門性の高い労働事件・商事事件などの特別裁判所が設けられているところもあります。

以前、J I L Aでインドネシアの司法研修所(日本とは違い、裁判官のみが研修を受けることができるようです。)を訪問した際、裁判官の仕組みとして、通常裁判所の人事は一方通行だと聞いたことがあります。例えば、日本では、はじめは地方裁判所の左陪席(3人の裁判官のうち、法廷で左に座る人で、若手の裁判官が務めます)からスタートしても、その後に地方裁判所の右陪席→裁判長となるとは限らず、大抵は、途中で高等裁判所の左陪席や右陪席を経験して、地方裁判所の裁判長となり、そこからさらに高等裁判所の裁判長へと進んでいくように思います。これに対し、インドネシアでは、地方裁判所の左陪席から始まるところは同じでも、そのまま地方裁判所の右陪席→裁判長を経て、高等裁判所の裁判官となるようで、高等裁判所の裁判官が地方裁判所に戻ることは原則としてないようです。データを調べたわけではないので確証はないのですが、もし本当だとすると、若手は経験豊かな裁判官と仕事を共にする機会が少なく、人材育成の観点からは些か問題がありそうですね。

さらに、インドネシアの特徴として、最高裁判所とは別系統で憲法裁判所が設置されています。こちらの写真が、2017年に同じくJ I L Aで憲法裁判所を訪れた際のものです。

憲法裁判所内には、インドネシアの憲法史が分かる資料館もあります。もちろん全てインドネシア語での説明ですが。。。

最高裁判所が違憲審査権を有する日本とは異なり、憲法裁判所が別途設置されている点が特徴的です。この憲法裁判所、実は普通とは異なり一発勝負なんです。つまり、日本のように憲法問題を地方裁判所から最高裁判所まで最大3回審理するのではなく、最初から憲法裁判所に訴訟が提起され、憲法裁判所の判断が最終決定となります。

 

いかがでしたか?

次回は裁判傍聴に行ったときの様子についてお伝えしたいと思います。

 

それではまた次回!