合弁契約の内容について

これまで合弁契約について何度か触れてきましたが、今日は、タイへの進出を検討されている方からのお問い合わせが多い、「合弁契約の内容」について、初歩的なことを簡単にまとめてみました。

日本からタイに事業進出するケースにおいて、日本企業又は日本人が、タイ企業(日系タイ企業を含む)又はタイ人と合弁会社を設立する場合があります。

これは、ケースによって異なりますが、日系企業は、技術やノウハウ、ブランドなどを提供し、タイ企業は現地での実績や人員を提供するなどして、双方にメリットのある事業を運営することを目的として設立されることになります。

この場合、両社の取り決め事項を事前に合弁契約書によって合意しておくことが、後々のトラブル回避の為には必ず必要となります。

合弁契約書を作成せずに会社を設立した場合、結果として、タイ側に新会社を支配されてしまい、日系企業は技術やノウハウだけでなく、商標や出資金なども、事実上奪い取られてしまうことになりかねません。

このように重要な役目を果たす合弁契約書ですが、単に締結するのみではなく、必要な条項が不足なく含まれていることが必要です。通常の場合、合弁契約に含まれるのは、最低限として次のような条項になります。

1.合弁会社の事業目的 
合弁会社がどのような事業を行うかについては、当事者間で合意しておく必要があります。

2.資本金額
これは、株式の保有割合に関わる合意を含みますので、極めて重要な内容となります。事業目的にもよりますが、タイ法人を設立するのであれば、タイ側が過半数を出資するという事になります。

3.株式の譲渡
株式の譲渡については、相手方の承諾が必要である旨の合意が必要です。そうでないと、第三者が事業に介入してくる自体を招いてしまいます。

4.株主総会の運営方法
合弁会社をタイ法人とする為にタイ側が過半数を出資しているような場合、株主総会の決議では、過半数の票はタイ側に握られていることになります。従って、重要な議題については、過半数ではなく3分の2の議決権が必要とするなど、日本側の賛成がなければ決定できないように、予め決めておく必要があります。重要な議題としては、定款変更、営業譲渡、新株発行、合併、増減資、解散などがあります。

5.取締役会の運営方法
取締役を日本側、タイ側から何人ずつ選出するか、代表取締役はどちらから何人ずつ選出するかという点は、非常に重要な事項となります。株主総会では過半数を握られていることのバランスを取る為に、取締役会の過半数は日本側が握るというケースもあります。また、代表取締役は、会社を拘束する契約や、登記の変更の為の書面に署名する権限を持ちますので、日本側からも必ず1名は選出しておく必要があるでしょう。

6.配当
合弁会社を設立するのは利益を得る為ですから、配当に関する条項は重要です。但し、金銭に関わる話ですので、株主総会や取締役会の決定に完全に委ねるのではなく、一定の基準を設け、客観的な基準に従って、配当がなされるよう決定しておく必要があります。

7.終了
どのような場合に、合弁契約を解消し、設立された合弁企業を解散するのか、という終わり方についても、一定の基準を設けておく必要があります。利益が上がらず撤退したいのに、相手方の反対の為にずるずると時間がたってしまい、損害を拡大させてしまうケースも考えられるからです。

以上のように様々な論点を事前に詰めて当事者間で合意し、さらには、これを合弁会社の定款に反映させておくことが重要です。異なる文化、異なる利益の当事者同士が一つの事業を行うことはそれだけ難しいことでもあり、トラブルを避ける為の最大限の注意が必要になってくるのは当然でしょう。

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