代表取締役の解任手続

タイや日本で、物騒な事件が続いておりますが、みなさんお変わりないでしょうか。
会社においても、物騒といえないまでも、紛争がらみの状況は度々生じます。
その様な案件の1つとして、タイ子会社の代表取締役を解任したい場合、場合によっては難しい状況が生じます。

取締役の構成や、代表権(サイン権)の与え方にもよって、状況が異なりますが、例えば、取締役が1名しかおらず、その取締役を交替したいというような場合、親会社が株式の過半数を有していて、株主総会では決議が出来るとしても、株主総会を招集出来るのは基本的には取締役ですので、解任される取締役の協力がなければ、株主総会を開催出来ないことになってしまいます。
その場合に、当該取締役が、自分は唯一の取締役として会社を牛耳っていきたいと考え、手続に協力しない場合、どの様になるでしょうか。

この場合でも、以下のような手続を執ることによって、株主は、取締役を解任することが出来ます。

① まず、全株式の5分の1以上を保有する株主は、取締役に対し、書面により、株主総会の招集を求めます(民商法1173条)。
② それから、30日以内に取締役が株主総会を招集しない場合、株主は、自ら株主総会を招集することが出来ます(民商法1174条)。
③ 株主総会では、取締役が議長を務めますが、当該取締役が現れない、または、出席しても議事を進行しない場合は、株主が自ら議長となって、議事を進行することが出来ます(民商法1180条)。
④ 株主総会において、現取締役の解任、新取締役の選任を決議します。
⑤ その後、株主は自ら取締役の解任及び選任を登記申請することが出来ます。
⑥ 取締役は、上記手続の瑕疵について、商務省に対して異議を述べることが出来ますが、一定期間内に手続の瑕疵を証明出来ない限り、登記が為されます。

以上のように、通常よりも時間はかかってしまいますが、唯一の取締役を解任することが法的には可能です。
ただ、このような事態に陥らないように、代表取締役は必ず複数名選任しておき、1名は、本社の代表者と兼任するなどしておくことが予防策として重要です。

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