ウルトラマン訴訟について

ウルトラマンという日本のヒーローキャラクターがありますが、このウルトラマンは、タイと深い関わりがあります。

ウルトラマンは、タイの仏像から形のヒントを得た、と言う説があります。

また、ツブラヤチャイヨーという会社があり、同社の代表取締役は、ウルトラマンがメジャーになる前、円谷プロに製作費を貸す代わりに、海外での権利を譲り受けて、その覚書(契約書)も作成していたという主張をしていました。

そのような覚書があると、ウルトラマンが世界的に有名になっても、円谷プロは、海外でウルトラマンのキャラクター・ビジネスにより利益を出すことができなくなってしまいます。

そこで、円谷プロは、自らの権利を確定するために、ツブラヤチャイヨーをタイと日本で訴えました。

当初、2000年のタイでの第一審判決では、初期ウルトラマン作品の日本以外での権利はツブラヤチャイヨーに帰属すると判断されました。

私が留学をしていたときには、この判決の後でしたので、学校の先生からウルトラマンはタイのものだ、と言われて非常にショックを受けた記憶があります。

円谷プロはこの判決後、覚書は偽造であるという新たな主張を加えて、タイ王国最高裁判所に上告し、2008年のタイ王国最高裁判決により円谷プロの主張が認められました。

他方で、円谷プロは、日本の裁判所でも著作権確認訴訟を提起し、2004年、最高裁において、社長印が本物であるとして、海外での権利はツブラヤチャイヨーに帰属すると認定し、円谷プロの敗訴が確定となりました。

タイでは、覚書は、偽造と判断され、日本では本物と判断されるという全く逆の判断が為されてしまったのです。しかも、それぞれの国が自国の国民に不利な判断をするという結果となりました。

日本の判決は、相互承認される場合を除き、原則として、日本以外の国では効力が認められませんし、タイの判決も同様です。
日本とタイでは、判決は相互承認されませんので、矛盾する判決が両立しうることになります。
また、第三国ではどうなるのかについては、その国の裁判所が最終的に判断することになり、実質的にビジネスの障害となってしまいます。

その後、2011年7月、知財高裁の別事件において、ツブラヤチャイヨー側が1998年にタイ以外の権利の放棄と引き換えに、バンダイから1億円受け取った事実が認められました。これにより、ツブラヤチャイヨーの権利は日本の判決上も実質的に消滅したことになったようです。

結果的に、ウルトラマンは、タイの最高裁判所の判決に救われた形になりました。この判決がなければ、ツブラヤチャイヨーは、権利を1億円では手放さなかったでしょう。タイでは、タイ人に有利な判決が下されるはず、と思いがちですが、このように、必ずしもそうではありません。しっかりと証拠を揃えて主張を固めることが出来れば、日本人に有利な判決が下されることも多くみられるのです。

従って、必要なときには、タイでもタイ人やタイの会社を相手取って訴訟を提起することも躊躇してはならないと思います。

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