適用法について

合弁契約などの契約書を作成する際に、一番最後のあたりに、適用法に関する条項が設けられることがよく見られます。

契約書に、適用法に関する条項がないと、相手方が契約書で約束をした内容を遵守しないなどの契約不履行があって、契約の解釈をしなければならなくなった場合に、どの法律に従って解釈すればよいのかが分からないことになってしまいます。

一般論としては、最も関連性の高い国の法律が適用されることになりますが、裁判所の判断を得るまではっきりしないことになります。

当事者間の信頼が厚い契約締結時や、事業が順調で何の問題もない時には、あまり深く考えないところですが、いつなにがあるかわからないので、 ここは明確にしておく必要があります。

それでは、タイで契約をする際には、どの国の法律が適用されるとするのがよいのでしょうか。
なんとなく、日本法にしておけば安心という声をよく聞きますが、果たして本当にそうでしょうか。

契約の内容にもよりますが、例えば、合弁契約のように、設立した会社の運営について、必然的にタイの民商法の規定の適用がある場合には、タイ法にせざるを得ないと考えます。

なぜなら、契約のみを他国法、例えば日本法で解釈しつつ、設立された会社にはタイ法が適用されるという事になりますと、あまりにも複雑になり過ぎて、訳が分からなくなってしまうからです。

他方で、物品の取引のように、必ずしも特定の国の法律が適用されるとは限らない取引の場合は、日本法とすることも十分合理性があると思います。

このように、とにかく、「日本法にしておけば安心」という訳ではないということに注意が必要です。
あえて、タイ法を適用法にしておいた方が、解釈がシンプルになって分かりやすく、予測可能性がつきやすい場合もありますので、その点の検討が必要です。

また、後に述べる紛争解決機関との整合性も考慮が必要です。
この点は、次週にご説明します。

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また、ブログの記事は、あくまで一般論ですので、個別の案件に適用された結果については、責任を負うことはできません。個別に専門家に確認するなどして、正確を期して頂くようにお願いいたします。