日本からタイに進出する際、会社設立の次に経営者の頭を悩ます問題として雇用の問題があります。
日本人の取締役・従業員の為に、会社が就労ビザ・ワークパーミットを取得しようとしますと、タイ国籍のLimited Companyを設立している場合では、日本人一人に対して最低4名のタイ人を雇用する必要が出てきます。
もっとも、設立当初から4名がそろっている必要はありませんが、ビザを更新する頃までには4名が必要と言うことになります。
良くあるケースは、日本語の話せる秘書、運転手、メイド、他1名といった構成です。他1名は、秘書のアシスタント、エンジニア、営業スタッフ等、事業の内容によって決まってくる事になるかと思われます。代表者の秘書、ないしは、マネージャーとして、最初に良い人材を厳選し、あとは、その人間にまかせるという方法もあります。
従業員を雇う際は、有用な人材を探さなければならないことはもちろん、将来的なトラブル防止の為に、雇用契約を各人と締結しておくことが必要です。その中では、基本給の金額や、試用期間、勤務時間についての規程を設けておく必要があります。契約書の作成は、会社が法的な手続を適正に行っていることを従業員に示す意味でも重要です。
また、契約書を作成するだけでなく、就業規則を定めておくこともトラブル防止の為には有用です。従業員の人数が10名に満たない場合は、就業規則を作成する義務はありませんが、簡単な会社の規則を作成して従業員に示すことをしても逆に問題はありません。このように規則を作成することで、勤務態度の悪い従業員を事前に排除する効果もあるといえます。
また、良く耳にする従業員とのトラブルとしては遅刻や欠勤が多いというものがありますが、会社の規則によって、遅刻の理由や欠勤の理由を書面で提出させると言うだけでも、抑止効果が認められる場合もあります。
さらに、雇用した後、従業員の能力に問題があることが判明した場合、解雇を検討せざるを得ないことになります。タイの労働法は労働者側に明確な解雇事由がない場合の解雇については、解雇手当を支払うことを要求しております。
但し、試用期間内であれば、明確な解雇事由がない場合であっても、解雇手当を支払わずに解雇することが可能です。労働者保護法上、解雇手当は、雇用期間が120日以上の場合に支払う義務が発生しますので、雇用期間が120日未満の間に解雇を通知すれば、解雇手当を支払わずに済むことになるのです。
但し、試用期間中の解雇であっても、解雇通知は30日前に行う義務がありますので、即時に解雇する場合は、30日分の給与を支払わなければなりません。
解雇手当や通知期間の給与相当額を支払っても、解雇された従業員がさらに様々な理屈で紛争を起こす場合もありますので、要らぬトラブルを避けるためは、解雇手当等を支払う際には、今後、会社に対する一切の請求をしない旨の書面に署名してもらうこともあります。
このように従業員の解雇には様々なトラブルがついて回りますので、解雇せざるを得ないような状況をなるべく避けるのが、まずは第一ということになります。その上で、解雇せざるを得ない場合でも、雇用期間、通知のタイミング、解雇手当の支払い、書面への署名等のスケジュールを事前に十分に考慮した上で、計画的に手続きを進める事が非常に重要となります。
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