第10回国際民商事法シンポジウムを受けて(その2)

Selamat sore!

皆様こんばんは。

前回は、3月4日に開催され、当事務所のウドムチャイ弁護士もゲストスピーカーとして参加致しました国際民商事法シンポジウムを元に、ジョイントベンチャー法制についてお話しさせていただきました。

このシンポジウムでは、私が留学に行っていたインドネシアについても発表がありましたので、今回はインドネシアについてもう少しフォーカスしてお話したいと思います。

 

インドネシアにおいても、前回お話ししたタイと同様、外国投資に対する規制(ネガティブリスト)があります。

シンポジウムでも発表されていましたが、これまで最新だった2016年版から2021年版に改訂されることとなりました。この話はまた別の機会に詳しくお伝えしたいと思います。

このシンポジウムでは、まず、そもそもインドネシアに対する投資方法として、新しくP T(日本でいう株式会社)を設立するか、それとも既存のP Tを買収するかということがテーマとして取り上げられていました。

新たな会社を設立する手続に関する条文については、本ブログのインドネシア株式会社法を概説した記事(https://nishizawa-law.com/blog_idn/?p=1831)にも掲載しておりますので興味がある方は是非ご覧ください。

一般的には、新たに株式会社を設立する場合、会社設計を自分で決められる自由度はあると思いますが、その反面、手続(特に許認可)に時間・費用がかかってくるデメリットがあると思います。

 

2つ目のテーマは、チェンジオブコントロール条項についてでした。

チェンジオブコントロール条項(COC条項)とは、一般に、株式買収等の理由により、会社に対する支配権の移転が生じた場合にかかる制約に関する条項をいいます。

ここで注意が必要なのは、インドネシアにおいては、必ずしも支配権の移転=株式過半数の取得ではないという点です。この支配権の移転は、実質的な観点から判断されるものですので、シンポジウムでも、例えば現地企業が90%の株式を保有していたとしても、その株式が全て議決権を有しない株式であれば、残りの株式10%(全て議決権付株式)を取得した場合でも支配権の変更にあたると説明されていました。

この支配権の変更に該当する場合には、その会社は、日刊紙での発表や報告書の作成など、従業員や債権者の保護のための様々な手続を行う必要があります。

 

最後の3つ目のテーマはこのシンポジウム全体のテーマであるジョイントベンチャー契約についてでしたが、この部分は、他の国とも共通する部分が中心でしたので割愛します。

 

今回は、インドネシアにおけるジョイントベンチャーについてお話をさせていただきましたがいかがでしたでしょうか。

インドネシアの現政権は、外資に関してかなりの開放的政策を進めている印象ですが、昨年の外資誘致を促進する条項を含むいわゆるオムニバス法の改正に伴い、これに反対した大規模デモが発生する等、今後もその動向を注視していく必要があります。

それではまた次回!

 

第10回国際民商事法シンポジウムを受けて(その1)

Selamat sore!

 

日本では緊急事態宣言の終了が再延期されてしまいましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

前回ご紹介させていただきましたが、先日、当事務所のウドムチャイ弁護士もゲストスピーカーとして参加致しました国際民商事法シンポジウムが開催されました。

ご参加していただきました皆様、誠にありがとうございました!

 

こちらのシンポジウムは、ジョイントベンチャー法制と実務対応がテーマとなっており、マレーシア・インドネシア・タイ・ベトナムの4カ国それそれについての説明がされました。

 

ご存じの方も多いかとは存じますが、ジョイントベンチャーとは、日本語では合弁会社と訳されますものですね。2つの異なる企業等が共同で出資を行なって1つの新会社を設立する形態をいいます。

別にそんなことしなくても、自分で会社設立をすればいいのでは?とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、東南アジアでは、自国産業の保護等を目的として、外国人・外国企業の出資を規制している場合が多く、一定程度の割合で現地の資本を入れなければならないことがあります。また、仮に外国企業等に対する資本規制がなかったとしても、なんのノウハウもない外国において単体で事業を成功させることは非常に難しく、現地の信用できるパートナーを見つけ、ともに事業を行なっていくという意味においても、ジョイントベンチャーは非常に有益な手段となります。

他方で、考え方や文化も全く異なる現地企業と共同で1つの会社を設立・運営するにあたっては、どのように経営方針を決定するか等会社の組織運営について詳細な取り決めを会社設立前に行なうことが必須です。このため、ジョイントベンチャー契約においては、株主構成や、株主の議決権、取締役の選出方法等、さまざまな事柄を事前に協議して取り決めます。

このジョイントベンチャーは、あくまでも契約ですので、契約自由の原則からすれば、どの国でも大枠としては同じような事柄を決めていくことになります。もっとも、現地に会社を設立するからには各国それぞれの法制度に適合した形にしなければなりませんので、その意味で、国ごとにジョイントベンチャーのあり方も大きく異なります。

タイの案件に関しては、当事務所でも数多く取り扱っておりますが、今回のシンポジウムを受けて、インドネシアとはやはり細かいところで考え方が違うと感じる点がありました。

例えば、タイでは、外国企業の定義が外国投資法の中でかなり明確に示されていることから、その基準を満たすような形で、持ち株会社を用いた日本からの投資スキームを組むことができます。ウドムチャイ弁護士も、今回のシンポジウムではこのスキームについてかなり丁寧に説明をしており、非常に興味深かったです。

また会社を設立するのに発起人となるべき株主が3名以上必要というのも、改めて考えると不思議な法律ですよね。日本は1名でも設立できますが、インドネシアでは会社設立も契約と考えるので、2名以上が必要となります。3名以上必要っていうのは特徴的に感じますが、必要な株主の人数が増えれば増えるほど、進出を検討される日本の方々も株主を誰にするかで非常に悩む部分かと思います。

他方、今回のように東南アジア4カ国について同時に説明することで、東南アジア全般で共通する点も多々あることが理解しやすかったですね。タイとインドネシアでいえば、特にネガティブリスト(外国投資規制)にはそれぞれ注意が必要かと思います。インドネシアにおいてはこのネガティブリストが頻繁に変更されますので、投資を行う際はその都度必ず確認をする必要がありますが、タイにおいてもリストが規制の程度によって3つに分かれている等、分かりにくくなっている部分もあり、リスト記載の業種に該当するかは実務でも慎重を要するところかと思います。

今回は、シンポジウムを受けての感想をさせていただきましたがいかがでしたでしょうか。

次回は、今回のシンポジウムの続きとして、インドネシアのジョイントベンチャーについてもう少し詳しくみていきたいと思います。

それではまた次回!