株式会社法 その6 登記・公告

Selamat sore!

 

皆さんこんにちは。

 

インドネシアも新型コロナウィルスの感染者数も一時に比べてだいぶ落ち着いてきた様子ですが、ようやく8000人を割り込んだといったところのようですね。

この前、ニュースで、某ファストフードチェーン店が、某韓国アイドルとのコラボ商品を発売したら、店内が宅配業者で満杯になったなんてニュースもありましたから、今後も不安に思えてきます。。。

 

さて、今日はインドネシア株式会社法シリーズのうち、前回に引き続き登記と公告について取り上げたいと思います。手続的な話であまり面白くないかもしれませんが、登記と公告でそれぞれ1条ずつしかありませんのでお付き合いいただければ幸いです。

 

なお、本ブログ記載の株式会社法は、同法の概説を目的としており(決して条文の完全訳ではありません)、かつ、以前ご紹介した英訳版に則って記載しておりますので、個別の案件につきましては、必ず別途、弁護士等の法律の専門家に個別にご相談ください。

 

 

第29条

本条が株式会社法上の登記について規定しています。

第1項は、単に会社登記が法務人権大臣によって管理されると規定しているだけですので、実質的には2項からですね。

2項では、登記しなければならない事項が規定されています。

商号、本店所在地、会社の設立趣旨、目的及び事業内容、資本金、設立詔書の番号あたりは日本と変わらないですが、定款変更時の法務人権大臣の承認・届出の証書番号や日付、果てはその手続きを行なった公証人の氏名・住所まで記載しないといけないのは独自ですね。

また、登記簿には、取締役・コミサリス(監査役)のほか、株主の氏名・住所まで記載します。但し、株主については第4項にも規定がありますのでまた後ほど。

さらに、監査義務対象会社の貸借対照表及び損益計算書の登記が求められています。

 

第3項では、記載すべき日付について規定されています。

第4項では、公開会社の場合の株主登録は、本法ではなく、資本市場法令の規定に従うべき旨が規定されております。

そのほか、第5項では会社の登記簿は一般に公開されること、第6項では、細かい手続は別途省令で定めることが規定されております。

 

 

第30条

登記の次は公告ですね。株式会社法上の公告は官報一択のようです。。。細かい手続は別途省令で定めることが規定される点は登記と同じですね。

公告は、基本的に、設立や定款変更時に行われることになります。

公告は、14日以内に行わなければならない点には注意が必要です。

 

以上が今回の登記・公告に関する条文でした。

早くワクチンを打って、現地の情報をお届けしたいですね。。。

 

それではまた次回!

 

※本ブログ記載内容は筆者個人の見解であり、所属する法律事務所の見解ではございませんので、何卒ご了解ください。

 

※個別の案件につきましては、必ず別途、弁護士など等法律の専門家に個別にご相談ください。

インドネシア株式会社法 その5〜定款変更②

Selamat sore!

 

今日はインドネシア株式会社法シリーズのうち、前回に引き続き定款変更を取り上げたいと思います。前回の記事で、定款変更には法務人権大臣の事前承認が必要な事項がある旨をご説明したかと思いますが、第22条以下では、その中で手続期限や効力発生日に関する例外規定が設けられています。

 

なお、本ブログ記載の株式会社法は、同法の概説を目的としており(決して条文の完全訳ではありません)、かつ、以前ご紹介した英訳版に則って記載しておりますので、個別の案件につきましては、必ず別途、弁護士等の法律の専門家に個別にご相談ください。

 

第22条 存続期間にかかる定款変更

ここでは、存続期間の延長に関する定款変更の承認の申請が規定されています。

会社は当初の存続期間が終了する日の 60 日前までに法務人権大臣宛に承認申請しなければなりません。他方、法務人権大臣は当初の存続期間が終了する前までに存続期間の変更を承認する義務を負います。

 

第23条 効力発生日

本条は、法務人権大臣の承認が必要な定款変更の効力発生日に関する一般規定です。

効力は、事前承認が必要な変更は、大臣から承認書が発行された日、事後届出で足りる変更は当該届出に係る受理書が発行された日に生じます。

但し、次条以下で例外があります。

 

第24条 公開会社/非公開会社の変更

本条は、非公開会社が公開会社となった場合の変更手続が規定されています。定款変更はもちろんですが、資本市場に関する登録届出も行う必要があります。

 

第25条 公開会社/非公開会社の変更の効力発生日

前条の定款変更の効力発生日が規定されています。

大会社と株式公募を行う会社で時期が違う点に注意が必要です。

また、第2項では、定款変更が無効となってしまった場合には、会社は定款変更について法務人権大臣が承認した日から 6ヶ月以内に、再度、非公開会社になった旨の定款変更を行う旨が規定されております。

なぜかこの辺は個別の事象ごとに細かく規定されていますね。。。

 

第26条 合併及び買収時の定款変更の効力発生日

こちらは、合併や買収が行われた場合の定款変更の効力発生日についての規定です。

こちらも、法務人権大臣の承認の要否によって異なるので注意が必要です。

 

第27条  不受理

本条は、定款変更の申請が受理されない場合について規定されております。①定款変更手続が法令に反している場合や、②変更した定款の内容が法令又は公序良俗に反する場合、③減資に関する定款変更で株主総会の決議に債権者の同意が得られない場合が規定されています。

 

第28条 準用規定

定款変更の規定の最後は準用規定です。

会社設立時に行う設立証書の承認申請手続及びその不受理に関する規定を定めた法第 9 条乃至第 11 条の規定が準用されることが規定されております。

 

いかがでしたでしょうか。

コロナの影響で現地に行けず、今の情報がなかなかお届けできなくてつらいところですが、引き続き、様々なインドネシア情報をお伝えできればと思っております。

 

それではまた次回!

 

※本ブログ記載内容は筆者個人の見解であり、所属する法律事務所の見解ではございませんので、何卒ご了解ください。

 

※個別の案件につきましては、必ず別途、弁護士など等法律の専門家に個別にご相談ください。

第10回国際民商事法シンポジウムを受けて(その2)

Selamat sore!

皆様こんばんは。

前回は、3月4日に開催され、当事務所のウドムチャイ弁護士もゲストスピーカーとして参加致しました国際民商事法シンポジウムを元に、ジョイントベンチャー法制についてお話しさせていただきました。

このシンポジウムでは、私が留学に行っていたインドネシアについても発表がありましたので、今回はインドネシアについてもう少しフォーカスしてお話したいと思います。

 

インドネシアにおいても、前回お話ししたタイと同様、外国投資に対する規制(ネガティブリスト)があります。

シンポジウムでも発表されていましたが、これまで最新だった2016年版から2021年版に改訂されることとなりました。この話はまた別の機会に詳しくお伝えしたいと思います。

このシンポジウムでは、まず、そもそもインドネシアに対する投資方法として、新しくP T(日本でいう株式会社)を設立するか、それとも既存のP Tを買収するかということがテーマとして取り上げられていました。

新たな会社を設立する手続に関する条文については、本ブログのインドネシア株式会社法を概説した記事(https://nishizawa-law.com/blog_idn/?p=1831)にも掲載しておりますので興味がある方は是非ご覧ください。

一般的には、新たに株式会社を設立する場合、会社設計を自分で決められる自由度はあると思いますが、その反面、手続(特に許認可)に時間・費用がかかってくるデメリットがあると思います。

 

2つ目のテーマは、チェンジオブコントロール条項についてでした。

チェンジオブコントロール条項(COC条項)とは、一般に、株式買収等の理由により、会社に対する支配権の移転が生じた場合にかかる制約に関する条項をいいます。

ここで注意が必要なのは、インドネシアにおいては、必ずしも支配権の移転=株式過半数の取得ではないという点です。この支配権の移転は、実質的な観点から判断されるものですので、シンポジウムでも、例えば現地企業が90%の株式を保有していたとしても、その株式が全て議決権を有しない株式であれば、残りの株式10%(全て議決権付株式)を取得した場合でも支配権の変更にあたると説明されていました。

この支配権の変更に該当する場合には、その会社は、日刊紙での発表や報告書の作成など、従業員や債権者の保護のための様々な手続を行う必要があります。

 

最後の3つ目のテーマはこのシンポジウム全体のテーマであるジョイントベンチャー契約についてでしたが、この部分は、他の国とも共通する部分が中心でしたので割愛します。

 

今回は、インドネシアにおけるジョイントベンチャーについてお話をさせていただきましたがいかがでしたでしょうか。

インドネシアの現政権は、外資に関してかなりの開放的政策を進めている印象ですが、昨年の外資誘致を促進する条項を含むいわゆるオムニバス法の改正に伴い、これに反対した大規模デモが発生する等、今後もその動向を注視していく必要があります。

それではまた次回!

 

第10回国際民商事法シンポジウムを受けて(その1)

Selamat sore!

 

日本では緊急事態宣言の終了が再延期されてしまいましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

前回ご紹介させていただきましたが、先日、当事務所のウドムチャイ弁護士もゲストスピーカーとして参加致しました国際民商事法シンポジウムが開催されました。

ご参加していただきました皆様、誠にありがとうございました!

 

こちらのシンポジウムは、ジョイントベンチャー法制と実務対応がテーマとなっており、マレーシア・インドネシア・タイ・ベトナムの4カ国それそれについての説明がされました。

 

ご存じの方も多いかとは存じますが、ジョイントベンチャーとは、日本語では合弁会社と訳されますものですね。2つの異なる企業等が共同で出資を行なって1つの新会社を設立する形態をいいます。

別にそんなことしなくても、自分で会社設立をすればいいのでは?とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、東南アジアでは、自国産業の保護等を目的として、外国人・外国企業の出資を規制している場合が多く、一定程度の割合で現地の資本を入れなければならないことがあります。また、仮に外国企業等に対する資本規制がなかったとしても、なんのノウハウもない外国において単体で事業を成功させることは非常に難しく、現地の信用できるパートナーを見つけ、ともに事業を行なっていくという意味においても、ジョイントベンチャーは非常に有益な手段となります。

他方で、考え方や文化も全く異なる現地企業と共同で1つの会社を設立・運営するにあたっては、どのように経営方針を決定するか等会社の組織運営について詳細な取り決めを会社設立前に行なうことが必須です。このため、ジョイントベンチャー契約においては、株主構成や、株主の議決権、取締役の選出方法等、さまざまな事柄を事前に協議して取り決めます。

このジョイントベンチャーは、あくまでも契約ですので、契約自由の原則からすれば、どの国でも大枠としては同じような事柄を決めていくことになります。もっとも、現地に会社を設立するからには各国それぞれの法制度に適合した形にしなければなりませんので、その意味で、国ごとにジョイントベンチャーのあり方も大きく異なります。

タイの案件に関しては、当事務所でも数多く取り扱っておりますが、今回のシンポジウムを受けて、インドネシアとはやはり細かいところで考え方が違うと感じる点がありました。

例えば、タイでは、外国企業の定義が外国投資法の中でかなり明確に示されていることから、その基準を満たすような形で、持ち株会社を用いた日本からの投資スキームを組むことができます。ウドムチャイ弁護士も、今回のシンポジウムではこのスキームについてかなり丁寧に説明をしており、非常に興味深かったです。

また会社を設立するのに発起人となるべき株主が3名以上必要というのも、改めて考えると不思議な法律ですよね。日本は1名でも設立できますが、インドネシアでは会社設立も契約と考えるので、2名以上が必要となります。3名以上必要っていうのは特徴的に感じますが、必要な株主の人数が増えれば増えるほど、進出を検討される日本の方々も株主を誰にするかで非常に悩む部分かと思います。

他方、今回のように東南アジア4カ国について同時に説明することで、東南アジア全般で共通する点も多々あることが理解しやすかったですね。タイとインドネシアでいえば、特にネガティブリスト(外国投資規制)にはそれぞれ注意が必要かと思います。インドネシアにおいてはこのネガティブリストが頻繁に変更されますので、投資を行う際はその都度必ず確認をする必要がありますが、タイにおいてもリストが規制の程度によって3つに分かれている等、分かりにくくなっている部分もあり、リスト記載の業種に該当するかは実務でも慎重を要するところかと思います。

今回は、シンポジウムを受けての感想をさせていただきましたがいかがでしたでしょうか。

次回は、今回のシンポジウムの続きとして、インドネシアのジョイントベンチャーについてもう少し詳しくみていきたいと思います。

それではまた次回!

 

アジア・太平洋法制研究会 第10回国際民商事法シンポジウム

Selamat pagi!

本日は、当事務所所属Udomchai Leesin弁護士が法務省法務総合研究所,公益財団法人国際民商事法センター主催国際民事法シンポジウム(オンライン開催)に参加いたしますので、そのお知らせでございます。

日時 2021年3月4日 13時30分〜

(シンポジウムは10時〜17時15分)

詳細は下記のリンクをご覧いただければと存じます。

001339256.pdf (moj.go.jp)

 

今回のテーマは東南アジアでのジョイントベンチャー法制についてでございます。

 

興味をお持ちの方は、事前にお申し込みいただいたうえで、是非是非ご参加くださいませ。

 

インドネシアの裁判制度〜その2 裁判傍聴

Selamat sore!

皆様、こんばんは。

日本は緊急事態宣言も解除されましたが、東京では感染者が微増といった形が続いていますね。やはり世間で言われているように、これからは第2波・第3波が必ず来ることを前提に行動していかなければならないのかもしれません。

 

インドネシアでも、感染のピークは過ぎたと見られているようで、制限を緩和する方向で動いているようです。しかし、そもそもレバラン休暇での帰省を防ぎ切れていない上、聞いたところによると、州境の越境違反者やマスクを着用していない者の処罰が、臀部への鞭打ち(つまり、お尻ぺん○んですね)や腕立て伏せというレベルで実施されているようですから、今後もどうなるか分からない状況ですね。

また、現地の弁護士の話では、インドネシアの労働省がコロナウイルスのコントロール状況が不明の場合、外国人労働者に新しい就労許可を発行しないという方針にしている旨の話も上がっていました。

 

長い闘いにはなりそうですが、皆さん頑張りましょう。

 

さて、今回は、まだ新型コロナがインドネシアで感染確認される前に行ってまいりました、ジャカルタ裁判傍聴の雑感をお伝えしたいと思います。

 

私が訪れたのはジャカルタの通常裁判所です。

入り口に入る前に、東京地方裁判所等と同様に荷物検査があります。

と言っても、東南アジアは大きなショッピングモールレベルでどこでもチェックしているので、この辺りは珍しくないですね。

こちらが入ってすぐのエントランス部分です。

それほど広くはありませんが、豪華な作りでした。

こちらが法廷前の廊下です。どこの国でも裁判所の廊下は重苦しい雰囲気ですね。

その日に行われる裁判は、全て電光掲示板に掲示されるため、友人の目当ての事件(大学の課題として、傍聴結果を報告しなければならなかったようです。)を探して指定の法廷に向かうのですが、全く始まる気配がありません。(係員にも確認しているので、場所を間違えたわけではありません。)

多分1時間後になったんだと思うと係員が言うので、仕方なく裁判所の受付を見学に行きました。

裁判体ごとに受付が分かれている日本の裁判所とは異なり、窓口はここ1箇所のようでした。このため、人で溢れかえっています。

待合室には、いろんな裁判手続きに関する説明書きが置いてありました。

さらに、インドネシアでは、(少なくとも制度上は)オンラインでの裁判手続も進んでおり、e-courtの窓口もありました。P Cを持っていない人用ですかね?

いまだにF A Xでのやり取りが続く日本でも早急に進めて欲しいところです。

 

1時間ほど時間を潰して元の法廷に戻りましたが、全く始まりそうにありません。

このままでは無駄足になってしまいそうなので、すでに開廷していた法廷に移動しました。

 

そこでは、法学者を呼んで賄賂罪が成立するかどうかの尋問を行っていたのですが、まず傍聴席のラフさに驚きます。日本ではカメラで法廷を撮影することはおろか、携帯電話を取り出して使用することすら禁止されているのですが、なんと、傍聴席で携帯を充電しながらゲームをしているじゃないですか!!

さらに他の大きめの法廷でも、一眼レフで写真を撮影していても裁判官は何も文句を言いません。。。これは日本の弁護士としてはカルチャーショックでした。私も撮影してみようかと思いましたが、一応は禁止事項のようでしたので控えました。

 

また、傍聴した尋問が専門家に対するものであったせいかもしれませんが、質問が全く一問一答形式になっていませんでした。弁護士がずっと話していたかと思いきや、今度は法学者が回答で延々と話し続けるといった具合です。裁判記録と言うか証言記録はどうやって残しているか不思議です。。。

 

1時間ほどかけて2つの法廷を見て回ったのち、最初に訪れた法廷を再度覗いて見ましたが、最後まで始まらないままでしたので、諦めてその場を後にしました。

 

いかがでしたが?

予想はしていたのですが、法廷の遅延はショックでした。せいぜい30分くらいの遅れならばわかるのですが、2時間以上過ぎても係員も慌てる様子はなさそうです。時間が読めないインドネシアは裁判の時間すら読めないことを痛感しました。

 

それではまた次回!

 

おまけ

訪れたジャカルタの裁判所では、エレベーターが見当たらず、皆、外の廊下と階段を使って移動していました。こちらが、その廊下から外を撮った写真です………隣家が近すぎませんか?

入り口でいくら荷物検査したところで、これなら隣家から火炎瓶等を投げ入れることは十分に可能な距離です。東南アジアのショッピングモールの荷物検査と同じで、裁判所の警備も形式的なものに過ぎないようですね。

インドネシアの裁判制度〜その1 制度概要

Selamat siang!

まだ感染拡大がインドネシアではそれほど大きな事態となってはいなかった3月某日に、友人に誘われてジャカルタの裁判を傍聴してきましたので、今回はインドネシアの裁判制度の概要をご紹介し、次回に私が傍聴したときの様子をお伝えしたいと思います。

 

インドネシアには最高裁判所とその下に設置される通常裁判所があるところは日本と同じですが、最高裁判所の管轄に、さらに宗教裁判所、軍事裁判所、行政裁判所があります。

宗教裁判所は、名前こそ「宗教」となっていますが、ここでいう宗教はイスラム教を指し、イスラム教徒の婚姻関係などを判断する機関です。イスラム教は他の宗教と違い、その戒律が実生活を法規範として拘束するレベルとなっているのでこのような事態になるのでしょうね。

 

こちらは私が所属するJ I L A(日本インドネシア法律家協会)で2017年に最高裁判所を訪問した際の写真です。

外にはジャカルタの象徴・モナスも見えます。

建物の最上階は、ドーム上になっており、最高裁判事が集まって議論ができるようになっています。しかし、写真を見ておわかりの通り、ものすごく広いのです。インドネシアには最高裁判事が約50名いらっしゃる(その時々で人数が変わります。。。)ので、これぐらいの広さにしなければならないのかも知れませんが、円形上に座席が配置されているため、端と端では互いの顔は見えなさそうですね。そもそも、この形、近くのモスクとそっくりなような。。。

さて、通常裁判所は日本と同じように、地方裁判所と高等裁判所があります。私が傍聴したのもこの通常裁判所です。また、通常裁判所には、専門性の高い労働事件・商事事件などの特別裁判所が設けられているところもあります。

以前、J I L Aでインドネシアの司法研修所(日本とは違い、裁判官のみが研修を受けることができるようです。)を訪問した際、裁判官の仕組みとして、通常裁判所の人事は一方通行だと聞いたことがあります。例えば、日本では、はじめは地方裁判所の左陪席(3人の裁判官のうち、法廷で左に座る人で、若手の裁判官が務めます)からスタートしても、その後に地方裁判所の右陪席→裁判長となるとは限らず、大抵は、途中で高等裁判所の左陪席や右陪席を経験して、地方裁判所の裁判長となり、そこからさらに高等裁判所の裁判長へと進んでいくように思います。これに対し、インドネシアでは、地方裁判所の左陪席から始まるところは同じでも、そのまま地方裁判所の右陪席→裁判長を経て、高等裁判所の裁判官となるようで、高等裁判所の裁判官が地方裁判所に戻ることは原則としてないようです。データを調べたわけではないので確証はないのですが、もし本当だとすると、若手は経験豊かな裁判官と仕事を共にする機会が少なく、人材育成の観点からは些か問題がありそうですね。

さらに、インドネシアの特徴として、最高裁判所とは別系統で憲法裁判所が設置されています。こちらの写真が、2017年に同じくJ I L Aで憲法裁判所を訪れた際のものです。

憲法裁判所内には、インドネシアの憲法史が分かる資料館もあります。もちろん全てインドネシア語での説明ですが。。。

最高裁判所が違憲審査権を有する日本とは異なり、憲法裁判所が別途設置されている点が特徴的です。この憲法裁判所、実は普通とは異なり一発勝負なんです。つまり、日本のように憲法問題を地方裁判所から最高裁判所まで最大3回審理するのではなく、最初から憲法裁判所に訴訟が提起され、憲法裁判所の判断が最終決定となります。

 

いかがでしたか?

次回は裁判傍聴に行ったときの様子についてお伝えしたいと思います。

 

それではまた次回!

刑法改正等に関する近時のデモについて

インドネシアで生活していると日本では想定されない色々なことが起きます。

身近なところで言えば、アパートに入っていたWi-Fi業者が10月1日になんらの通知もなく、突如サービスを打ち切りました。私の部屋はそもそも携帯の電波が届きにくいため、お陰で家ではインターネットが使えない日々が続いております。。。

 

さて、日本の日常生活では想定されないものの最たる例として、デモが挙げられると思います。日本でも、東京で勤務していた際は、霞ヶ関の裁判所周りでもよくデモ行進を見かけましたが、せいぜい4列縦隊の整然としたもので、なんとも可愛らしいものでした。

インドネシアは違います。日本ではパプアのデモ(暴動)が報道されていたようですが、2019年9月下旬、ジャカルタは大規模デモの真っ只中でした。

抗議内容は刑法改正を中心とする近時の法改正に対するものです。

そもそもの前提として、インドネシア の刑法は基本的にオランダ植民地時代に制定されたままになっていたようで(民法も未だにオランダ植民地時代のままです。)、真の独立を目指してその改正を長年審議していたようです。

しかし、その内容が知れるや、直近で汚職撲滅委員会の権限を縮小させるような改正がなされていたことも相まって、学生を中心にその正当性を疑問視する声が高まり、法案の撤回を求めて、ジャカルタを含む複数の大都市で大規模デモに発展しました。

報道によれば、1998年のスハルト失脚時以来の大規模デモだそうで、2019年9月25日時点で、少なくとも300名以上が負傷、94名が逮捕され、その後には、死者まで生じる深刻な事態となりました。

海外メディア(日本は除かざるを得ませんが)が特に取り上げていたのは婚外の性交渉に関する刑法改正ですが、他にも大統領への不敬罪や堕胎に関する罪も新たに規定されるなど、イスラム色が濃く、かつ、民主化から遠ざかる内容(報道機関からすれば言論の自由に対する弾圧する内容)となっていました。

また、定住地のない方に対する罪(これに関しては日本も他人事ではないですね。軽犯罪法1条4号がありますから。)だったり、女性が夜間に一人で歩くことを処罰する内容だったり、果ては家で飼っている鶏が隣家に侵入することに対してまでも刑罰を科すことまで法案に含まれるなど、俄かには信じられないような話も出ていました。

 

また、法案の内容もさることながら、その改正に至る経緯自体も問題となっていたようです。

前回行われた選挙の結果に基づき、10月1日に新国会が成立することになっていたのですが、政府は旧国会期間中に、選挙で争点となっていなかった上記法案の成立を目指したのです。

結局、ジョコ・ウィドド大統領が法案の審議延期を発表しましたが、その後もデモは法案自体の撤回を求めて10月2日頃までは続きました。

私が現在在学しているインドネシア大学からは、この期間は一切ジャカルタ、特にデモ発生地には近づかないように命令が出ていたため、デモの様子をこの目で見ることは叶いませんでしたが、連日、テレビ局がトップニュースで扱っていました。

現在、デモは無くなったようですが、法案自体が撤回されたわけではなさそうなので、今後もインドネシア がどのような道を進むのか、経過を注視していきたいと思います。

 

しかし、今回の事件で私が一番気になったのは、何が「事実」かよく分からないということでした。私も弁護士の端くれとして、本件の情報収集に努めるべく、法案に対し声高に反対するインドネシア大学の学生複数名に、「インドネシア語でいいから、法案そのものを見せてくれ」と尋ねたのですが、その内容を直接見た人は、少なくとも私が尋ねた学生の中には一人もいませんでした。つまり、法案の内容を自ら吟味しないまま、デモを行っていたのです。

インドネシア人の友人に国会のホームページを見てもらいましたが、どうも法案は掲載されていないようです。

このため、結局、どこまでが真実なのか、未だによくわかりません。例えば、婚外の性交渉についても、婚外の性交渉全てを禁止したと記載する新聞と、同棲する男女にのみ限定しているように報道する新聞とがあり、その構成要件すら判然としません。まして、鶏が隣家に侵入したら罰金刑など、到底そのまま鵜呑みにするわけにはいきません。。。

 

私がインドネシアに来てまだ2ヶ月しか経っておらず、インドネシア語も分からないことが、主な原因なのでしょうが、この国で「事実」を議論することの難しさを痛感した2週間でした。

 

インドネシア 弁護士会(ADVOKAI)訪問

今回は、私が運営委員を務めておりますJILA(日本インドネシア法律家協会)のメンバーが今週火曜日に訪問したインドネシア の弁護士会KAIについてご紹介したいと思います。

日本にも弁護士会はあるのですが、インドネシアの法曹制度は日本とは大きく異なっているため、必然的にその役割も大きく異なります。

特に、インドネシアの弁護士会は独自に資格試験を実施し、この試験に合格すれば基本的に弁護士になれます。日本のように、裁判官・検察官・弁護士と同一の試験を受け、同一の研修を受けるわけではありませんので全然違いますね。

このように独立権限を有するインドネシアの弁護士会ですが、一旦は統一弁護士会(PERADI)を弁護士法により設立していたものの、現在は再度分裂し、今では6つの弁護士会が存在しているようです。

 

今回訪問させていただいたのは、その弁護士会のうちKAI(Kongres Adovokat Indonesia)というところです。

皆さん気さくな方々で大変歓迎していただき、

このように日本語の歓迎のボードまで作っていただきました。

 

こちらのKAIにはインドネシア全体で5〜7万人(正確な人数は分からないと言われてしまいました)中、約25000人のインドネシア人弁護士が所属しているということです。

 

先程述べた弁護士会の分裂について理由を伺いましたが、何か特定の決定的要因があったというわけではないが、残念ながら明確な答えは返ってきませんでした。

(そもそも前にあった統一弁護士会も真の意味で1つになれていなかったというご説明でした。)

今後の方向性としては、今ある複数の弁護士会を統一するというよりは、むしろ既存の弁護士会の上位組織として、別の団体を作る動きがあるそうですが、今年選挙したばかりで、まだ法制化できるかわからず、道はまだ遠いということでした。

日本と違いインドネシアでは各弁護士会がそれぞれ弁護士資格試験を実施するため、各団体で足並みが揃わなければ、弁護士の質の低下は今後大きな問題となりえます(極論を言えば、最大派閥を形成するために特定の弁護士会が試験の難易度を下げ、人数を増やしやすくすることも考えられます)ので、弁護士としての信頼を得るためには少なくとも試験制度の統一は実現していただきたいところです。

 

また、法曹に対する信頼と関連してインドネシアで必ず問題になるのが、法曹の汚職です。
直近では発覚したのが年に4件程度だそうですが、KAIの会長ご自身、未発覚の事例は他にも存在することを認めていました。若い裁判官だけでなく、ベテランの裁判官や大学教員まで務める弁護士も現に捕まっており、かなり由々しき問題となっております。

裁判官の初任給を伺ったところ、年間1億4400万ルピア(現在のレートで約110万円)ということなので、所得の低さ(と言ってもインドネシア全体の平均からすれば決して低額ではないと思われますが)も要因の一つなのかもしれません。

白熱した意見交換が行われましたが、こちらからは日本のお菓子をお土産に贈呈いたしましたところ、

(左が、KAI会長のHERNANTO先生、右がJILA会長の草野先生です。)

私を含め全員に盾と会員バッジをいただきました。

今後もインドネシアの弁護士会動向は注視して参ります。

 

おまけ

インドネシアで会合等に出席すると、必ずと言っていいほど水とともに↓の箱が目の前に置かれています。

この箱の中はというと,,,

大体このような感じで、お菓子と揚げ物、時にはちょっとしたパン(roti)が入っています。

勧められるので毎回食べるのですが、会合が一日3回あったりすると、もうこれだけでお腹いっぱいになって夕食を抜かなければならなくなるなどの弊害が出ます。

皆様もインドネシアで会議に出るときはご注意ください。

(歓待の証しなんですけどね。。。)