刑法改正等に関する近時のデモについて

インドネシアで生活していると日本では想定されない色々なことが起きます。

身近なところで言えば、アパートに入っていたWi-Fi業者が10月1日になんらの通知もなく、突如サービスを打ち切りました。私の部屋はそもそも携帯の電波が届きにくいため、お陰で家ではインターネットが使えない日々が続いております。。。

 

さて、日本の日常生活では想定されないものの最たる例として、デモが挙げられると思います。日本でも、東京で勤務していた際は、霞ヶ関の裁判所周りでもよくデモ行進を見かけましたが、せいぜい4列縦隊の整然としたもので、なんとも可愛らしいものでした。

インドネシアは違います。日本ではパプアのデモ(暴動)が報道されていたようですが、2019年9月下旬、ジャカルタは大規模デモの真っ只中でした。

抗議内容は刑法改正を中心とする近時の法改正に対するものです。

そもそもの前提として、インドネシア の刑法は基本的にオランダ植民地時代に制定されたままになっていたようで(民法も未だにオランダ植民地時代のままです。)、真の独立を目指してその改正を長年審議していたようです。

しかし、その内容が知れるや、直近で汚職撲滅委員会の権限を縮小させるような改正がなされていたことも相まって、学生を中心にその正当性を疑問視する声が高まり、法案の撤回を求めて、ジャカルタを含む複数の大都市で大規模デモに発展しました。

報道によれば、1998年のスハルト失脚時以来の大規模デモだそうで、2019年9月25日時点で、少なくとも300名以上が負傷、94名が逮捕され、その後には、死者まで生じる深刻な事態となりました。

海外メディア(日本は除かざるを得ませんが)が特に取り上げていたのは婚外の性交渉に関する刑法改正ですが、他にも大統領への不敬罪や堕胎に関する罪も新たに規定されるなど、イスラム色が濃く、かつ、民主化から遠ざかる内容(報道機関からすれば言論の自由に対する弾圧する内容)となっていました。

また、定住地のない方に対する罪(これに関しては日本も他人事ではないですね。軽犯罪法1条4号がありますから。)だったり、女性が夜間に一人で歩くことを処罰する内容だったり、果ては家で飼っている鶏が隣家に侵入することに対してまでも刑罰を科すことまで法案に含まれるなど、俄かには信じられないような話も出ていました。

 

また、法案の内容もさることながら、その改正に至る経緯自体も問題となっていたようです。

前回行われた選挙の結果に基づき、10月1日に新国会が成立することになっていたのですが、政府は旧国会期間中に、選挙で争点となっていなかった上記法案の成立を目指したのです。

結局、ジョコ・ウィドド大統領が法案の審議延期を発表しましたが、その後もデモは法案自体の撤回を求めて10月2日頃までは続きました。

私が現在在学しているインドネシア大学からは、この期間は一切ジャカルタ、特にデモ発生地には近づかないように命令が出ていたため、デモの様子をこの目で見ることは叶いませんでしたが、連日、テレビ局がトップニュースで扱っていました。

現在、デモは無くなったようですが、法案自体が撤回されたわけではなさそうなので、今後もインドネシア がどのような道を進むのか、経過を注視していきたいと思います。

 

しかし、今回の事件で私が一番気になったのは、何が「事実」かよく分からないということでした。私も弁護士の端くれとして、本件の情報収集に努めるべく、法案に対し声高に反対するインドネシア大学の学生複数名に、「インドネシア語でいいから、法案そのものを見せてくれ」と尋ねたのですが、その内容を直接見た人は、少なくとも私が尋ねた学生の中には一人もいませんでした。つまり、法案の内容を自ら吟味しないまま、デモを行っていたのです。

インドネシア人の友人に国会のホームページを見てもらいましたが、どうも法案は掲載されていないようです。

このため、結局、どこまでが真実なのか、未だによくわかりません。例えば、婚外の性交渉についても、婚外の性交渉全てを禁止したと記載する新聞と、同棲する男女にのみ限定しているように報道する新聞とがあり、その構成要件すら判然としません。まして、鶏が隣家に侵入したら罰金刑など、到底そのまま鵜呑みにするわけにはいきません。。。

 

私がインドネシアに来てまだ2ヶ月しか経っておらず、インドネシア語も分からないことが、主な原因なのでしょうが、この国で「事実」を議論することの難しさを痛感した2週間でした。

 

インドネシア 弁護士会(ADVOKAI)訪問

今回は、私が運営委員を務めておりますJILA(日本インドネシア法律家協会)のメンバーが今週火曜日に訪問したインドネシア の弁護士会KAIについてご紹介したいと思います。

日本にも弁護士会はあるのですが、インドネシアの法曹制度は日本とは大きく異なっているため、必然的にその役割も大きく異なります。

特に、インドネシアの弁護士会は独自に資格試験を実施し、この試験に合格すれば基本的に弁護士になれます。日本のように、裁判官・検察官・弁護士と同一の試験を受け、同一の研修を受けるわけではありませんので全然違いますね。

このように独立権限を有するインドネシアの弁護士会ですが、一旦は統一弁護士会(PERADI)を弁護士法により設立していたものの、現在は再度分裂し、今では6つの弁護士会が存在しているようです。

 

今回訪問させていただいたのは、その弁護士会のうちKAI(Kongres Adovokat Indonesia)というところです。

皆さん気さくな方々で大変歓迎していただき、

このように日本語の歓迎のボードまで作っていただきました。

 

こちらのKAIにはインドネシア全体で5〜7万人(正確な人数は分からないと言われてしまいました)中、約25000人のインドネシア人弁護士が所属しているということです。

 

先程述べた弁護士会の分裂について理由を伺いましたが、何か特定の決定的要因があったというわけではないが、残念ながら明確な答えは返ってきませんでした。

(そもそも前にあった統一弁護士会も真の意味で1つになれていなかったというご説明でした。)

今後の方向性としては、今ある複数の弁護士会を統一するというよりは、むしろ既存の弁護士会の上位組織として、別の団体を作る動きがあるそうですが、今年選挙したばかりで、まだ法制化できるかわからず、道はまだ遠いということでした。

日本と違いインドネシアでは各弁護士会がそれぞれ弁護士資格試験を実施するため、各団体で足並みが揃わなければ、弁護士の質の低下は今後大きな問題となりえます(極論を言えば、最大派閥を形成するために特定の弁護士会が試験の難易度を下げ、人数を増やしやすくすることも考えられます)ので、弁護士としての信頼を得るためには少なくとも試験制度の統一は実現していただきたいところです。

 

また、法曹に対する信頼と関連してインドネシアで必ず問題になるのが、法曹の汚職です。
直近では発覚したのが年に4件程度だそうですが、KAIの会長ご自身、未発覚の事例は他にも存在することを認めていました。若い裁判官だけでなく、ベテランの裁判官や大学教員まで務める弁護士も現に捕まっており、かなり由々しき問題となっております。

裁判官の初任給を伺ったところ、年間1億4400万ルピア(現在のレートで約110万円)ということなので、所得の低さ(と言ってもインドネシア全体の平均からすれば決して低額ではないと思われますが)も要因の一つなのかもしれません。

白熱した意見交換が行われましたが、こちらからは日本のお菓子をお土産に贈呈いたしましたところ、

(左が、KAI会長のHERNANTO先生、右がJILA会長の草野先生です。)

私を含め全員に盾と会員バッジをいただきました。

今後もインドネシアの弁護士会動向は注視して参ります。

 

おまけ

インドネシアで会合等に出席すると、必ずと言っていいほど水とともに↓の箱が目の前に置かれています。

この箱の中はというと,,,

大体このような感じで、お菓子と揚げ物、時にはちょっとしたパン(roti)が入っています。

勧められるので毎回食べるのですが、会合が一日3回あったりすると、もうこれだけでお腹いっぱいになって夕食を抜かなければならなくなるなどの弊害が出ます。

皆様もインドネシアで会議に出るときはご注意ください。

(歓待の証しなんですけどね。。。)