こんにちは。
光陰矢の如しとはよく言ったもので、あっという間に師走ですね。
私の住むインドネシアでもクリスマスムードが高まってきました。街にはクリスマスソングが流れ、クリスマスセールが行われるのは日本と同じです。但し、気温が夏と変わらないので、全くこちらの気分が盛り上がりません。。。
クリスマスツリーも白っぽくしてあったりと雪感を出そうと努力している様が見受けられるのですが、いかんせんこの暑さでは体感と雪の視覚が全く一致しないのです。
ともあれ、祝日は基本的に国が認める(最近6つになりましたが)5つの宗教に関する行事がベースとなっており、クリスマスも祝日となっているくらい国としては浸透しているようです。
さて、今日はインドネシア株式会社法シリーズのうち、第2章から設立を取り上げたいと思います。
なお、本ブログ記載の株式会社法は、同法の概説を目的としており(決して条文の完全訳ではありません)、かつ、以前ご紹介した英訳版に則って記載しておりますので、個別の案件につきましては、必ず別途、弁護士など等法律の専門家に個別にご相談ください。
設立に関する条文はおおよそ次のような構造です。
(各冒頭のカッコ内番号は、特に言及のない限り当該条文の項番号です。)
第7条
⑴会社は2名以上のインドネシア語による設立証書によって設立されなければなりません。インドネシア語というのがかなりのネックですね。また、前回お伝えしました通り、インドネシアでの会社はあくまで契約に基づき設立されるものですので、発起人も当然2名以上となります。
(2) 各発起人は、設立会社の株式を引き受ける義務を負います。このため、原則として株主となりますので、内資・外資を問わず、どの会社も基本的に株主は複数存在しなければなりません。
(3) 但し、新設合併の際は、前項の定めは適用されません。
(4) 会社は、大臣(法務人権大臣を指します。以下同様です。)による設立認可が発行された日より法人格を取得します。
(5)先程、発起人兼株主は2名以上と述べましたが、途中で1名になってしまった場合の対処が規定されています。残された1名の株主は、6ヶ月以内にその保有する株式の一部を第三者に譲渡または新株を発行する義務を負います。
(6)上記6ヶ月を経過した場合、株主は、会社の全ての契約及び損失に関して個人責任を負うことになります。また、利害関係人は地方裁判所に対し、当該会社の解散命令を申し立てることができるようになります。
(7)株主が2名以上という規定も、国有会社等の場合は例外的に適用されません。
第8条
⑴前条第1項にある通り、設立の際は証書によって行う必要があります。この設立証書は、定款及びその他の会社設立に関する情報を記載しなければなりません。
(2) 前条にある「その他の会社設立に関する情報」の詳細が規定されています。
①自然人の発起人の氏名、出身地及び生年月日、職業、住所及び国籍、法人発起人の商号、本店所在地、住所、大臣の設立認可番号及び認可日
②指名された取締役とコミサリスの氏名、出身地及び生年月日、職業、住所及び国籍
③払込済株式の株主名、株式の詳細及び額面価額
この規定から、法人も発起人になれることが分かりますね。また、会社の株式は額面を記載して発行することになります。
(3) 発起人は、設立証書の作成に関し、第三者に委任することができる旨が規定されています。
第9条
⑴法人格取得のための大臣決定に対する申請方法が規定されております。この点、インドネシアは日本より進んでいて、基本的に電磁的方法をもって申請を行うことになります。
(2) 但し、設立申請より前に、会社商号の申請を行う必要があります。
(3)当該大臣決定に対する申請や商号の申請は、公証人に対してのみ申請を委任できます。弁護士は手続自体はできないんでしょうかね。。。今後の調査課題です。
(4) 手続の詳細は政令により定められる旨が規定されています。
第10条
⑴大臣への申請は、会社の設立証書に署名した日から 60 日以内に、付属書類とあわせて大臣に提出する必要があります。
(2) 前項の「付属書類」に関する規定は、別途省令によって定められます。
(3) 申請書及び付属書類に問題がなければ、その旨が大臣から電磁的方法で連絡がきます。
(4) 逆に問題があっ場合、大臣は問題がある旨及びその理由を電磁的方法により通知してくれます。
(5) 問題がなかった場合、大臣からの通知から30日以内に、申請者は電子システムによって提出した認可申請書及び付属書類の原本を提出しなければなりません。結局ここで原本は必要となりますので、全てがネットワーク上で完結するわけではない点に留意しなければなりません。
(6)原本の提出がなされた場合、14 日以内に電子署名のある設立認可が発行されます。
(7) 第5項に規定にされる30 日以内に原本の提出をしなかった場合、または付属書類に不備があった場合には、大臣は電磁的方法でその旨通知し、第 3 項規定の認可申請書の受理通知は無効となってしまいます。
(8) 但し、異議がない旨の通知が無効となった場合、第5項の申請者は再度設立申請書を提出することができます。
(9) 第1項に定める60 日の期間内に大臣の設立認可申請が提出されない場合には、設立証書自体が無効となり、法人格未取得の会社は法により解散され、発起人によって整理されることになります。
(10) 第1項の規定は、再提出の場合にも適用されます。
第11条
上記電磁的方法を行うための環境がない地域では、別途省令で定められた申請書の提出に関する更なる規定が適用されます。
第12条
⑴発起人が会社設立の前に行う株式の保有及び払込に関する法律行為は設立証書に記載されなければなりません。
(2) 前項規定の法律行為が公正証書の方式によらない場合、かかる証書は設立証書に添付される必要があります。
(3) 他方、公正証書の方式による場合は、当該公正証書の番号、作成日、作成した公証人の名前及び住所を設立証書に記載することになります。
(4) 上記を満たさない場合、当該法律行為の権利義務を会社に帰属させることはできず、会社もこれらの法律行為に拘束されません。
第13条
⑴発起人が設立前の会社の利益のために行った法律行為は、会社が法人格を取得後、最初の株主総会で、すべての権利義務を承認し、引き継ぐことを承認した場合にのみ会社を拘束します。
本条及び次条が、日本でも問題となる設立前の法律行為です。次条は「会社名義で行う法律行為」ですので、こちらは発起人名義で行う法律行為を指すものと思われます。
日本では設立前の法律行為についてはその内容自体かなり限定されていますが、少なくとも私がインドネシア大学で受けている講義の中では内容による限定については言及されていませんでした。本条及び次条による手続き的担保があるからなのかもしれませんが、この点も今後の調査課題です。
(2) 前項に定める株主総会は、会社設立後60日以内に開催されなければなりません。
(3)また、全株主が出席し、かつ、全株主が承認した場合のみ有効となります。
(4) 上記条件を満たなさない場合、法律行為を行った発起人が個別に責任を負うことになります。
(5) 株主総会の承認は、当該法律行為が、会社設立前に全ての発起人からの書面による承認を得ている場合は不要となります。
第14条
⑴法人格取得前の会社名義による法律行為は、全ての取締役、発起人、及びコミサリスが共同で行う場合に限り認められます。もっとも、会社名義で行ったとしても全ての取締役、発起人及びコミサリスは連帯してかかる法律行為の責任を負います。
(2) 前項の法律行為が一部の発起人によってのみ行われた場合は、当該発起人はかかる法律行為に責任を負い、会社は当該法律行為に拘束されません。必ず関係者(発起人だけではありません)全員で行う必要があります。
(3) 本条の法律行為は、会社が法人格を取得した後、自動的に会社に承継されます。
(4) また一部発起人のみが行った法律行為も、法人格取得後最初の株主総会において、全株主が出席し、かつ満場一致による承認された場合は、会社が当該法律行為の権利義務を承継します。
(5) 前項に定める最初の株主総会は、法人格取得後60日以内に開催されなければなりません。
以上が設立に関する条文の概要でした。各手続に要する日数が細かく規定されている点は安心感がありますが、実務上どこまで実行されているかはまた別問題ですので、今後はこの点も調べていきたいと思います。
それではまた次回!
※本ブログ記載内容は筆者個人の見解であり、所属する法律事務所の見解ではございませんので、何卒ご了解ください。
※個別の案件につきましては、必ず別途、弁護士など等法律の専門家に個別にご相談ください。